ラバ―ズΧクロス
教室に戻ると、圭ちゃんがニヤニヤした顔で私達をむかえた。
ニヤケ顔の理由を知らない矢野君は、怪訝そうにした。
「なんだよ?」
「べつにぃ~?それよりココアは?」
圭ちゃんは必死にニヤケ顔を隠しながら、右手を突き出した。
「ほい。これで良いんだよな?」
「うん。サンキュー」
私は矢野君の顔を見上げた。
「本当に、ありがとう」
すると、矢野君が照れたように笑った。
「いいって。じゃあね」
手を振って教室を出る矢野君に、私は遠慮がちに振り返した。
「は―づき!!」
ストロ―をくわえている圭ちゃんを見ると、再びニヤケ顔に戻って手招きをしていた。
「いただきま―す」
私は無視してお弁当を広げる。
「ね、なんの話したの?」
「普通の話」
「普通って?」
昨日の電話の仕返しなのか、圭ちゃんがやたらと食い下がる。
私は何気なく話題を変える。
「そういえば、矢野君っていつもどこでお昼食べてるんだろ?」
単純で素直な圭ちゃんは、すんなり答えてくれる。