ラバ―ズΧクロス
「ほんと、葉月って初々しいよね~。焦れったいったらありゃしない!!」
まだからかう口調の圭ちゃんを見て、私は拗ねた表情のままそっぽ向いた。
黙り込んだ私を見かねて、さすがに圭ちゃんも低姿勢になる。
「あの…。葉月ちゃん?怒っちゃった?」
恐る恐るという感じで、私の顔色を伺う。
圭ちゃんが私をちゃん付けするのは、私に対してやましいことがある証拠だ。
これは、幼い頃から変わらない。
私のお父さんと圭ちゃんのお母さんは兄妹だ。
つまり、私と圭ちゃんはいとことなる。
お互い一人っ子で家も近いから、今はもう姉妹さながらになっている。
「…怒った」
そっぽ向いたまま言うと、圭ちゃんはさらに慌てふためく。
「え、えっと…。ごめんね?」
いつも天真爛漫な圭ちゃんがここまで困惑しているのをみると、つい笑いが込み上げてくる。
「ふふっ。冗談、怒ってないよ」
圭ちゃんは切れ長の目をまん丸くさせてから、ホッと安堵の息をついた。