ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
あと6ヶ月
1
追いかけて 好きといえ
おまえはいつも 後悔ばかり
想像とは少しずつ ズレていく現実
「ああ、うん。元気にしとるって。大丈夫って。送らんでいいから」
中野ミツヒロ・通称ミツは携帯の終話ボタンを押した。
最近見た洋画の待ち受け画面の上の表示は9月18日15時36分。
駅へ続く通りは9月に入ったことにも気づかないかのように
日差しの熱を空と反射しあう。
街路樹の陰に入っても常温のゼリーのような生ぬるい空気が
湿気とともにうっとおしくミツを覆い込む。
ミツはデニムの尻ポケットに携帯を落とし歩き出した。
一息吸い込む毎に口の中に暑さが広がる。
右折したトラックがミツの前を通り過ぎる。
アスファルトの熱気が舞い上がり、ミツはスン、と鼻を鳴らした。
駅前のレンタルビデオ店でバイトを始めたのは専門学校に入ってすぐ。
平日の夕方は客も少なく、
ミツは紺色のエプロンをつけて新作コーナーのDVDを並べている。
店内には流行の洋楽が流れ、店長が声をかけるまで
ミツは黙々とカゴから棚へDVDを並べていた。
「ミツ、今日納品されたダンボール、運ぶの手伝ってもらっていいか?」
ミツは顔をあげた。
茶色く染めた髪が伸びて耳にかかる。
「いいっすよ」
ミツは立ち上がりエプロンを払った。
並べかけのDVDが入ったカゴを持って店長の後をついていく。
「今日、何入ったんすか?」
「ああ?春に公開してたやつ、ほら何だっけ?若い監督の」
「尾崎幸隆の『アジサイ』すか?」
「おお、それそれ、さすが映像専攻。よく知ってんなー」
「そうでもないっす。」
店長についてバックヤードに入る。
前後に開閉するカンタンな造りのドアを抜ける。
ミツは専門学校で映像を専攻している。
映像といっても映画ではなく、CMとかPVとかそういったジャンルを学ぶ。他にもアート系の専攻がいくつかある。
「こっちにあるやつ、全部運んで中身出して、検品っすから」
六箱ほどの大きめのダンボールが無造作に積んである。
ミツはとりあえず一番上のダンボールに手をかけた。
おまえはいつも 後悔ばかり
想像とは少しずつ ズレていく現実
「ああ、うん。元気にしとるって。大丈夫って。送らんでいいから」
中野ミツヒロ・通称ミツは携帯の終話ボタンを押した。
最近見た洋画の待ち受け画面の上の表示は9月18日15時36分。
駅へ続く通りは9月に入ったことにも気づかないかのように
日差しの熱を空と反射しあう。
街路樹の陰に入っても常温のゼリーのような生ぬるい空気が
湿気とともにうっとおしくミツを覆い込む。
ミツはデニムの尻ポケットに携帯を落とし歩き出した。
一息吸い込む毎に口の中に暑さが広がる。
右折したトラックがミツの前を通り過ぎる。
アスファルトの熱気が舞い上がり、ミツはスン、と鼻を鳴らした。
駅前のレンタルビデオ店でバイトを始めたのは専門学校に入ってすぐ。
平日の夕方は客も少なく、
ミツは紺色のエプロンをつけて新作コーナーのDVDを並べている。
店内には流行の洋楽が流れ、店長が声をかけるまで
ミツは黙々とカゴから棚へDVDを並べていた。
「ミツ、今日納品されたダンボール、運ぶの手伝ってもらっていいか?」
ミツは顔をあげた。
茶色く染めた髪が伸びて耳にかかる。
「いいっすよ」
ミツは立ち上がりエプロンを払った。
並べかけのDVDが入ったカゴを持って店長の後をついていく。
「今日、何入ったんすか?」
「ああ?春に公開してたやつ、ほら何だっけ?若い監督の」
「尾崎幸隆の『アジサイ』すか?」
「おお、それそれ、さすが映像専攻。よく知ってんなー」
「そうでもないっす。」
店長についてバックヤードに入る。
前後に開閉するカンタンな造りのドアを抜ける。
ミツは専門学校で映像を専攻している。
映像といっても映画ではなく、CMとかPVとかそういったジャンルを学ぶ。他にもアート系の専攻がいくつかある。
「こっちにあるやつ、全部運んで中身出して、検品っすから」
六箱ほどの大きめのダンボールが無造作に積んである。
ミツはとりあえず一番上のダンボールに手をかけた。