ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
観客が帰ったライブハウスは、
オーナーの好意でそのまま打ち上げ会場となった。
注文しておいたピザやオードブルが運ばれてくる。 
親しいファンや、ライブハウスの関係者、バンド仲間、
ミツの知らない顔もたくさん来ていた。

フラワー・オブ・ライフのメンバーが現れると歓声と拍手が起こり、
サトシがマイクをとった。
「えーと、皆さん、今日はお忙しい中、
おれたちの解散ライブに来てくださってありがとうございます。」

サトシが深々と頭を下げると、他のメンバーも続いた。
顔をあげた洋二は、いつものようにややうつむき加減で
どこか他のところを見つめていた。

「それでは、最後のひと時を楽しんでいってください。」
サトシが締めくくって、マイクのスイッチを切った。
そのままサトシは個別に挨拶をしてまわった。
裕太もいつもならば即効で食べ物に飛びつくのに、
今日はサトシと一緒に挨拶まわりをする。

羽月と洋二はファンに囲まれて、笑顔で話していた。
ファンの女子が洋二を取り囲み、食べ物や飲み物を差し出している。
とても、家賃五万五千円共益費込みの、
木造ボロアパートの住人には見えない。

洋二もこの時ばかりは、笑顔を浮かべ、アイドルのように対応していた。
ミツは再びレッグボタンを押して、その風景をおさめていた。
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