ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―

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選抜上映会は専門学校に併設されたホールで行われた。
ミツは後ろのほうで一人で自分のドキュメンタリーが上映されるのを
見ていた。

大きなスクリーンに映る洋二。
カメラを向けると照れくさがって目をそらす。
レンタルスタジオで練習する姿。
曲についてサトシと議論する真剣な姿。
目を閉じて切なく歌う姿。
羽月を追う視線。
裕太とふざけあう姿。

最後のライブの日、カメラに向かって真っ直ぐに投げかけられた視線。
何かを諦めたように、口元だけ微かに緩んだ笑顔。
悲しげな、切れ長の瞳。
打ち上げ会場で誕生日を迎えて、はしゃぐ洋二を遠くから映した。

薄暗いステージに残された、主のいないスタンドマイク。

上映後はゲスト講師を含めた講評をしていく。
黒ブチ眼鏡の髭を生やした五十代の男が立ち上がり、マイクをとった。

ミツは少し緊張して、男を見つめる。
「えー、とても良い作品でしたね。時間もかけている。作り手の強い思い入れが感じられて非常に好感が持てました。」
 男は手元のメモを見ながら続ける。

「夢を追う若者たちが現実と向き合って、抗いながら、散っていく様子はクリエイターとして胸が苦しくなるところですね。」
ミツは組んでいた足を解いた。

「特にラストのステージだけのカットは象徴的で・・・」
違う、とミツは思った。
ミツが彼らと、洋二と過ごして、カメラで切り取っていったものは、
そんなものではなかったはずだった。

しかし、その後に続く講師も、皆同じような感想を述べた。
ミツは組んだ手をみつめた。
自分は一体、何がやりたかったのだろう。
何を残したかったのだろう。
これから先、どうやって生きていけばいいのだろう。

相変わらず、洋二の姿を見ることはなかった。
引っ越していった様子はなかったが、ギターの音も聞こえなかった。
何だかまるで、全てが夢だったのではないかと、ミツは疑った。
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