拉致って☆監禁♪~白銀王子と猫耳錬金術師の甘い部屋~
「彼女は、王家の血筋ではないのに!
 彼女には他に、愛する者がいるというのに、引き裂いて……っ!
 王と望まぬ婚儀をさせ、この国で『最も高貴な女性』の称号を得た挙句。
 雨神の扉を開くべく、殺されにリベルタへ送られるというのか!!
 そして、この僕に、一部始終を黙って見ていろというのか!?」

 強く握り込んだ自分の爪で、自分の掌を傷つけて、赤い血液が、一滴。

 つぃ、と滴って落ちる。

 その手を握ったまま、壁に打ち付けて、キアーロは、低く声を出した。

「フィオーレだけは、絶対。
 生け贄の王妃などには、させない……!!」

 そう、固くつぶやく決心に、マウロは、おろおろと、声をかけた。

「そんな……!
 キアーロ様は、何をするおつもりですか!?」

 婚礼の儀式は、明日だ。

 既に、儀式の用意は、整っており。

 しかも、王妃が生け贄のことも、城内どころか、国中のほとんどが知る事だったから。

 兵の警戒は厳重この上なく、例え王子であったとしても。

 彼女を連れて、逃げ出すのは、まず、不可能に近いと言えた。

 何しろ、雨が降ってくれないことには、自分と家族が飢えて死ぬかもしれないのだ。

 大地の乾きによる事態は、既に、洒落にもならぬほど深刻だった。

 だから、こればかりは。

 大臣から一兵卒に至るまで誰一人、王子の買収にも、賄賂にものらないのは明白だった。
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