拉致って☆監禁♪~白銀王子と猫耳錬金術師の甘い部屋~
「王妃を寝取って、王位継承権を剥奪された上、国外追放?
 それもまた、一興。
 ならば、僕は海賊にでもなろうか?
 我が大陸から離れた新大陸には、魔法の力が無い代わり『科学』という力があるという。
 水を多量に使わないと生えない、大陸の主食『リーソ(稲)』ではなく。
 乾燥に強い『グラーノ(麦)』という黄金に輝く植物が、地平の果てまで埋め尽くす、豊かな国があるという。
『王子』の身では、国を離れることができずとも、一介の海賊であれば、視察のし放題だ」

「キアーロ様!」

 もはや。

 キアーロは、悲鳴のようなマウロの叫び声など聞いてはいなかった。

 自分の前に立ちはだかる侍従長を蹴散らし。

 まるで、会話が判って止めているような黒猫が。

 長いマントの先をくわえて引っぱるのを振りきって、大股に部屋を出て行った。

 自分の破滅に向かって。

 そして。

 キアーロの怒りに当てられ、呆け。

 王家の寝所を象徴する、豪奢な絨毯の上に座り込んだ侍従長と、黒猫の耳に。

 絹を裂くような悲鳴が聞こえたのは、それから間もなくのことだった。






 

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