拉致って☆監禁♪~白銀王子と猫耳錬金術師の甘い部屋~
 静かに感情を押し殺して燃える炎から、怒りを吸収して業火のごとく。

 最後は、激昂して、キアーロは叫び、フィオーレの肩を掴むと、壁にたたきつけるように、押しつけた。

「ドーニは、お前を義父王に売った!
 小なりとは言え、連隊長だった身分に飽き足らず、ドーニはそんなに将軍になりたかったのか!?」

 キアーロは、石作りの壁を力任せに叩いて怒鳴った。

 ドーニの一族テッラ デッラは、先祖代々王家に仕える魔法剣士を排出する名門の一つだ。

 ドーニの母はキアーロの乳母を勤め。

 ドーニ自身。

 地竜と呼ばれる大地に密着した術は、彼にしか使えない、珍しい技の持ち主だった。

 もっとも。

 地面に輪を描き、長い呪文を唱えれば『時間』と言う異界の扉を開き。

 その空間を、最大半年ほど進めることが出来るその技は。

 珍しいだけで、剣が舞い、放たれた矢が飛ぶ戦場どころか、日常生活でも、ほとんど役立ってなかった。

 荒れ地ばかりのこの国で、やっと取れた果実や、獣の乳をワインやチーズに発酵させるための時間短縮に使えるか、どうか。

 せいぜい、そんなところだったから。

 高い身分は、自分の兄弟や親戚に奪われ、目立たない小隊をいくつかあてがわれているばかりだ。

 それでも、王家に仕える名門の出らしく。

 剣を扱わせれば、右に出る者が居ないほど上手く。

 彼が指揮を執る、部下からの信頼も厚かった。
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