拉致って☆監禁♪~白銀王子と猫耳錬金術師の甘い部屋~
雨神の下僕
「キアーロさま~~
お待ちください~~」
力が抜けるような、マウロの声に、キアーロは、面倒くさそうに振り返った。
黒髪の王子の視線の先には、大木に囲まれた比較的整備された、とは言え峠道。
人気の無い街道を徒歩で歩いている侍従長の姿を映していた。
ここは、イデアーレ王国とリベルタ国の国境付近だ。
キアーロに付き従っているのは、マウロの他に、黒猫しかおらず。
なにやら大荷物を抱えた侍従長が間の抜けて見える。
キアーロの足元にいる黒猫でさえ。
呆れたように『にゃあ』と鳴いたぐらいだ。
けれども、マウロはくじけずに、汗をかきかき言った。
「ほ、本当にドーニさまの隊を待たずに、ここまで来て良かったんですか?」
「当たり前だ。
あんな奴いたとしても、足手まといだし、時間の無駄でしかない」
幼なじみのドーニは、今や、国の四分の一の軍隊を預かる将軍だ。
そんな者が国境付近を動けば、リベルタとの交戦になりかねない。
表だっての言い方は、もっとも至極だったが、キアーロに別の感情が入りまくっているのが、マウロには、わかってた。