拉致って☆監禁♪~白銀王子と猫耳錬金術師の甘い部屋~
ぽた……ぽた……
と。
水滴はゆっくり落ちて来る。
耳を澄ませば、良い音だった。
……他には、キアーロの耳に、何も聞こえなかったから。
舌を、ぎりぎりまで伸ばせば、鎖を揺らさなくとも、ようやく届く、その水滴を。
舌先で味わえば、とても美味だった。
他に、王子が飲んだり食べたりするものは、何もなかったから。
いつから、こんな風に捕えられてしまったのか。
今は、もうキアーロ自身、あまり、覚えていなかった。
雨神の生贄となり。
地上に雨を降らす代わりに。
鎖がゆっくり、容赦なく広げる傷と飢えは。
キアーロの精神と体力を、大幅にすり減らし。
迫りくる死神の足音を予感させたけれども。
キアーロにとって、時間の概念は、無意味で。
昼か、夜かも。
何日、ここにいるのかも。
大した意味を持たなかった。