メロンパンにさようなら
そして、彼は、私に背を向けたまま、話し続けた。


「本当かどうかなんて、そんなもの、どうでもよくてさ。噂だけが1人歩きしてて。いつの間にか尾びれ背びれがついていってさ」

「……」

「誰も、本当の姿を知りたい訳じゃない。本当のことなんてどうでもよくてさ。だからさ、好きに言えばいいって、そう思ってた」



その声があまりにも切なくて、寂しそうで、まるで泣いているように感じて、思わず、彼の背中の制服の裾を掴んだ。
 


なんでそうしたのか、自分でも分からない。


ただ、消えちゃいそうな気がしたから。
泣いている背中が、そのまま消えてしまいそうだったから。


思わず、消えてしまわないように、ぎゅっと掴んだんだ。
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