メロンパンにさようなら
「メロン?」
制服の裾を掴んでいることに気付いた彼が、そう言って振り向いたので、慌てて手を離した。
「あっ、ごめん」
バツが悪くなって俯いてしまった。
何してんだ?って言われそうで。
そう言われたら何て答えよう。
なんとなく?なんて笑って答えてみようか。
なんて、ごちゃごちゃ頭の中で考えている私の顔を覗き込んで、ふっと笑った彼の顔に、胸が、ドキンッと大きく音を立てた。
その笑顔が、余りにも優しくて、これまで見たことないくらい穏やかな笑顔だったから。
「お前とだったら、噂になってもいいかもな」
そう言って、いつものように悪戯っぽく笑った彼を、いつもより意識してしまう。
それは、きっと、さっきの笑顔を見てしまったから。
あんな穏やかに笑う高見翔を知ってしまったから。
「な、何がですか」
うまく返事が出来ているのかな。
少し上ずった声で返事をした。