メロンパンにさようなら
鼻息がかかるのが分かるくらいの至近距離まで顔を近付けた高見翔を見つめることしかできない。
な、何?
「メロンが惚れてる奴って、もしかして……」
至近距離で見つめながら言う、この台詞に、こくりと頷きそうになる。
そうだよ。
あんただよ。
って。
こんなにドキドキしてるのに、気付かないの?
って。
「そこ。部室内キス禁止」
すぐ後ろで部長の声がして、高見翔から顔を仰け反るような体制になりながら、部長の方を振り向いた。
「まだしてねぇよ」
高見翔が“チッ”と舌打ちしながら部長に言うと、
「まだ、って」
はぁ。と呆れたように溜め息を吐く部長。
この二人のやりとりも、いつものことで、楽しいって思う私がいるんだ。
こうやって、春休みまで、高見翔がいなくなるまで、ドキドキハラハラしながらも、穏やかな時間を過ごすもんだと思っていた。
そんな穏やかな時間は、突然やってきた“あの人”によって、崩れていった。