メロンパンにさようなら

「植草。高見を見てきてくれ」

部長が、突然そんなことを言った。


「でも、何処にいるのか」

分からないからと言おうとしたら、


「多分、空でも見てるんじゃないかな」


と言いながら、上を指差した。

それが、屋上のことを言っているんだって分かったけれど、私が屋上に行っていいのか分からない。

彼は、それを望んでいるの?
1人で居たいんじゃないの?
誰かを待っているとしたら、それは私じゃなくて、さっきの彼女なんじゃないの?


そう思うと、足が竦んで前に進めない。


「あいつ、待ってるよ。……お前のこと」

なんで、そんなこと部長に分かるんだって突っ込めば、きっと、“なんとなく”なんて返事が返ってくるんだろう。


何の根拠もない。

だけど、そんな部長のその一言が、私の背中を押してくれた。


「行って、きます」

「あぁ。よろしく」


そう言って、手を振って見送られ、私は、屋上へと駆け出した。

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