メロンパンにさようなら
「しかも、メロンに見つけられるって、不覚だよな」


いつもみたいに意地悪く言ったその言葉が、寂しく聞こえるのは、なんでだろう。


気のせい?
ただの思い過ごし?

ううん、そうじゃない。


1ヶ月、ずっと見てきたから分かる。

心の奥では泣いているのにこうやって普通を保とうとするんだよね。


弱さを見せまいと、強くありたいと見せるのが、あなたなんだ。

寂しさを見せまいとする態度をしているあなたに、土足で中に入ってはいけないんだね。


あなたがそれを望んでいるのなら、私は、いつもと同じように言い返そう。


いつもみたいに言い合って、笑い合おう。



「不覚って。光栄の間違いですよ」

上手く、笑って答えているだろうか。
いつものように、笑えてるかな。


ふっと笑われて、まるでそれが合図だったかのように、足が自然と彼のいる方へ動いていた。

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