メロンパンにさようなら
一歩、また一歩、ゆっくり彼へと近付いた。
「今、鼻で笑いました?」
「あぁ」
「酷っ」
「拗ねんなよ。光栄だって、思っただけだよ」
優しく笑ったその顔は、私の胸にドクンッと大きな音を立てた。
「……」
「照れてんの?」
「照れてなんて、」
“ないです”なんて言おうとしたのに、傍にいる高見翔を見ると、上手く言葉にならなくて誤魔化すように、フェンス越しに遠くを眺めた。
「かくれんぼで、鬼を待ってる気分だったよ」
「え?」
突然の言葉に、何のことか分からず高見翔を見ると、同じようにフェンス越しに遠くを眺めながら、
「あれって、最初は、見つかりたくなんてないんだけど。時間経つとさ、見つけてほしい気持ちが、強くなってさ。忘れられてんじゃねぇのか?って思ったりするだろ?そんな気分」