メロンパンにさようなら


「気にすんな」


部長は、そう言って何事もなかったように席についたけれど、私は、ただ茫然と彼女が出て行った教室の外の廊下を眺めていた。



何も言い返すことが出来なかった。

何も。




「植草?」

大丈夫か?と言うように聞いてきた部長に、思わず、


「何も知らないんです」


と、思っていた言葉を零した。


一度零れた言葉は、次から次へと零れてくる。


「私は、先輩のこと何も知らないんです。陸上のことも、何にも知らない……
知らないのに、休んでいいって言った。無責任に、そんなこと言ったんです!間違ってたっ」

「落ち着けっ!」



部長が、目の前に立って、ぐっと私の両腕を掴んで、真っ直ぐこっちを見た。
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