メロンパンにさようなら
「っ……」


言葉が出てこないのは、彼の“キス”って言葉が頭の中を支配しているから。


思わず視界に入ったお茶で潤んだ彼の口唇が、妙に色っぽくて、胸がまた速く鼓動する。



「キス、してみる?」


ニヤリと笑った彼の言葉は冗談だって分かるのに、思わず頷いてしまいそうになる。



「じょ、冗談っ…」

「メロンって、素直になれない奴だよな」



言葉を遮り、顔を近付けてきた彼に、キスされるって分かっているのに、拒否しようとしない私がいる。


身動き出来ないのは、なぜだろう。


それは、彼にキスしてほしいから?


それとも、彼が寸前でキスをしないって思っているから?




互いの口唇が触れる寸前のところで、高見翔がぽつりと呟いた。


「目ぇ、閉じねぇの?」


って。

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