メロンパンにさようなら



え?

それは、つまりは、どういうこと?



と思ったとほぼ同じタイミングで、頬に柔らかい何かが当たった。




「無防備過ぎだろ」


そう言って、私の髪の毛をくしゃくしゃとした後、彼はベンチから立ち上がり、数歩前に歩いて、池の柵に手をやり、池を眺めた。



頬に当たった柔らかい何かが、彼の口唇だとすぐ理解できた。


そうだと分かったと同時に頬が熱を持って、熱かった。


池を眺めている高見翔の後ろ姿しか見えず、今、一体どんな顔をしているのかなんて分からない。


分からなくてよかったと思った。


知るのが怖いから。


なんで、キスしたのか。

顔を見たら何か分かりそうで、知りたくなかった。
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