メロンパンにさようなら
どのくらいそうしていただろう。
頬に持った熱が随分と冷めてきて、池にいた白鳥がバタバタと羽を広げて飛んだ。
それが合図だったかのように、彼は両手を空に向かって大きく伸びをした後、くるりと振り返って、
「で、なんでメロンは、ここにいるんだ」
と、話を元に戻した。
まるで、さっきのキスなんてなかったのように、言われたこの言葉に、少しだけ寂しさもあった。
「ん?」
なかなか話を切り出さない私に催促するように、また私の隣に腰掛けて、聞いてきた。
ここに私がいる理由を、なんでそんなに知りたいのか分からない。
理由を話せば、小室先輩のことに繋がる。
彼女の話になれば、彼はきっと……
“逃げんな”
部長の言葉を思い出した。
そう
向き合わなきゃ。
逃げずに、ちゃんと話を聞きたいから。
話さなきゃ。ここに来たわけを。今日、部活であったことを。