メロンパンにさようなら
真実
ベンチから立ち上がった彼は、数歩歩いて池のほとりの木の柵にもたれかかり、夕焼けに染まった空を見上げた後、ふと、こっちを向いた。
「なぁ、メロン」
「なん、ですか?」
言葉を詰ませながら聞いてしまったのは、余りにも真っ直ぐにこっちを見てるから。
「俺が跳ばない理由って、アイツが原因だと思ってる?」
寂しげな声が風と共に耳に響く。
「……分かんないです」
伝えたい言葉は、こんな言葉。
噂なんて本当かどうか分からない。
そこに真実がどれだけ含まれているのかなんて、本当のことを知らない限り分かることなんてないのだから。
寂しそうな顔をしている彼が消えてしまわないように、そおっと近づいてジャージの裾をぎゅっと掴んだ。
「メロン?」
どうした?
というように顔を覗き込まれ、潤んだ彼の瞳に私が映っているのが分かった。