メロンパンにさようなら

彼のその言葉が嬉しかった。

これまでの高見翔と一緒にいた時間は無駄なものなんかじゃないって言われたように感じたから。


けれど、そう思ったのもつかの間で、

「植草さん。あなたも帰って」


背後に小室由紀がやって来て、そう言った。

彼女の言葉に何も言えず、言われるがまま帰ろうと一歩足を踏み出そうとした時、隣にいた青野ミツルが声を出した。


「何言ってんの?高見がこうやって戻って来たのは、この子のおかげだろ。あいつが跳べたのも、」

「関係ないっ!翔が跳べたことと、この子は何の関係もないっ。陸上のこと何も知らない人は、部外者と一緒よっ」

「お前なぁ、」

「分かったら帰って!」


彼の言葉なんて聞かず、きつく言った彼女の言葉に何も言い返すことなんて出来なかった。



そう……私は部外者だから

陸上のこと、何も知らないから


私と高見翔とは、何も関係なんて、ないんだから……


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