メロンパンにさようなら

そんな大きな声を聞いて、愛は何かを察したんだろう。


「彼女と何かあった?大丈夫?」

って聞きながら、“ほらっ”て無理やり私の口にイチゴを入れた。


「…んっ」

「言いたくなったら、いつでも聞いてあげるから」

そう言って、にっこり笑った。

愛は、いつだって、そう。無理に聞いてこようとしない。

何かあったって分かってるのに聞き出そうとせず、私から話すのを待っていてくれる。


そんな彼女に私は、いつも救われてばかり。



「ありがと」

今は、まだ、こうやってお礼しか言えない。

もう少し、自分の気持ちが落ち着いてから話そうと思うから。


必ず話すから。

だから、少し、待っていて。




そう思っていたら、



「植草さんっ!」


賑やかだった教室が一瞬、静まり、私を呼ぶ女の人の声が教室中に響く。



声がした方を見ると、扉の前に小室由紀の姿があった。


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