メロンパンにさようなら
「もう、翔に近づかないで」
昼休み、連れられて来た中庭で、開口一番、小室由紀に言われた言葉。
なんとなく、嫌な予感はしていた。
昨日の今日で、教室までわざわざやってきた彼女が言うことは、いいことなんてないだろうって覚悟も出来ていた。
けれど、ストレートで言われると、やっぱり何も言い返せなくなる。
頭を下げるでもなく、きつく睨まれたように言われて動くことさえも出来なかった。
何も言わない私に、更に、小室由紀は続けた。
「翔は、陸上に戻ってきたの。あなたと遊ぶ余裕なんてないの。
陸上部と全く関係のない、あなたと一緒にいたら、翔は、またダメになる。
だから、もう、翔に近づかないで」
そう言うだけ言って、背を向けて、彼女は元来た道を帰って行った。