メロンパンにさようなら

強引に彼に連れられて来たのは、昨日と同じ中庭。


この寒空の下、外に出ている人も殆んどいないから、とても静かな、この空間。



“ドンッ!”

「痛っ……」


いきなり立ち止まった彼の背中に、よそ見をしていた私は、おもいっきり顔をぶつけてしまった。


鼻を擦っていると、くるりと彼が振り返り、


「悪かったな」

と、低い声で謝ってきた。


「はっ……?」

なんで、いきなり謝ってんの?


「お前、あんこ食えないなら、食えないって最初っから言えよ」

「は?」

あのぅ、何の話でしょうか?

「そしたら、カレーパンにしといてやったのに」


ああ……“あんパン”のことね

って違うし! 

そうじゃなくてね、なんで自分が“メロンパン”を食べること前提で話をするのかな。


そもそも、最初っから言えって、おかしいでしょ。

最初に、私は“メロンパン”を頼んだんだけど!


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