メロンパンにさようなら
「なんか、今日の部活、疲れた」
「そぅ?」
「うん……」
疲れたのは、高見翔を意識してたからじゃないの?と言われそうで、だから、余計なことは口に出さないでおこうとそれ以上喋らずに昇降口まで来ると、
「あっ!」
靴を履き替える時、手に鞄を持っていないことに気が付いた。
「鞄……」
「何やってんのよ」
あり得ない。と言わんばかりに呆れたように言う愛に、
「はは……」
なんて、苦笑いしながら誤魔化すしかない。
先に帰ってて。と言って、愛に手を振り、地学室へと向かった。
ほんと、あり得ない。
鞄、忘れて帰るなんて。
疲れてるんだよ、きっと。
なんて、自分に言い訳をするけれど、原因は、そんなことじゃないって自分で気が付いてる。
疲れてるんじゃなくて、彼を気にして仕方なかったから。
だけどそれを肯定する気にはまだなれず、ただ疲れただけだと自分に言い聞かしながら、地学室まで来ると、中からボソボソと、誰かが話している声が聞こえた。