メロンパンにさようなら
「メロン」
あなたから“メロン”って聞くのも、あと1ヶ月なのかな。
あなたが陸上部に戻ったら、こうやって言い合ったことさえも愛しく感じる“いい思い出”になるのかな。
あれ?
なんでだろう。
なんで、こんなにも目の前のこの人とのことを愛しいなんて思ってしまっているんだろう。
「どうした、植草」
部長の声で、ふと我に返った。
「あっ、鞄忘れて」
そう。
それだけにここに来ただけなのに。
何を意識しているのだろうか。
教室に入り、机の上に置いてあった鞄を掴み、
「じゃあ、失礼しました」
と、何事もないように帰ろうとしたら、
ぐいっと、高見翔に腕を捕まれ、
「メロン、お前……」
彼は、そう言って、じっと真っ直ぐな瞳で、私を見てきた。