メロンパンにさようなら


今の話、聞いてた?


そう問いかけるような、そんな彼の瞳に、動揺している自分が映っているのが分かる。



「な……に?」

少し声が震えている。



聞いてた?と聞かれたら、素直に、聞いていたと答えよう。

二人の会話を誰かに話すようなことはしないし、忘れろと言われたら、忘れられる。



ごくりと唾を飲み込む音が周りに聞こえるんじゃないかというくらい静かな空間で、声を発したのは、


「そんなに、俺に会いたかったわけ?」

彼だった。


空気を変えるように、にやりと、いたずらっ子のような笑みを浮かべて言う、高見翔に、


「はぁ?」

と言いながらも、少し救われた気がして、心の中で感謝した。


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