メロンパンにさようなら

「素直になれば?」


からかっているって分かっているのに、この言葉に、胸が大きくドキンと鳴る。


本当に素直になったら、あなたは、どうするの?


素直に、

寂しかった。あなたのことを好きだから

と、そう伝えれば、あなたはそれに答えてくれますか?





「……寂しかったです」



「メロン?」

どうしたんだ?というように、顔を覗いてくるあなたは、私の気持ちなんて気付いてないんだね。


少し困ったような、そんな顔するの、ズルい。



だから、


「冗談です」

冗談ってことにしてあげる。
あなたと、あと1ヶ月、こうやって言い合っていたいから。



「は?」

「冗談に決まってるじゃないですか。じゃあ!」


逃げるように教室を出た。


「おいっ!」

後ろで彼の声が聞こえたけれど、振り返ることも立ち止まることもしなかった。


ううん、

出来なかった。



これ以上一緒にいたら、素直な気持ちが、口からポロポロ零れてしまいそうだから。


だから、逃げたんだ。

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