メロンパンにさようなら
「高見。お前、植草と一緒の班な。じゃ、俺は、ちょっと他の班見てくるから」
と言い、逃げるようにその場を去った部長。
「ちよっ、部長!」
二人っきりにしないでほしかった。
暗闇の中、逃げていく部長の背を見ながら、何から話そうか色んな単語が頭に浮かんでは消えていく。
“この間は、ごめん”
って先ず謝ろうか。それよりも、
“こんばんは”
って挨拶から入ろうか。
「おいっ」
そんなことを考えていると、高見翔に後ろから声をかけられ、
「はいっ!」
ビクッとして、思わず声が上ずってしまう。
「どうした?」
何、緊張してんだ。とふっと笑われ、恥ずかしくなって、
「別に」
と、可愛くない言葉で返事をしてしまう。
何から話したらいいか、なんて考えていたことがバカみたいに、高見翔は、まるで、この間のことなんてなかったかのようにいつもと同じ様子で話してきた。
私一人が意識していただけなんだね。