メロンパンにさようなら

そんな私の態度にふっと笑いながら、はいはい、と軽く返事をした彼は、


「惚れたか?」

いきなり真剣な顔をしてじっとこっちを見るから、


「え?」

どきんっと大きく胸が音を立てた。


何……言ってんの……


見つめた先にいる彼は、真剣な顔をして、

「俺に、惚れた?」


なんて聞いてくるから、胸の鼓動が先ほどよりも速くて、息苦しくなる。

彼の真っ直ぐな揺らぎない瞳に吸い込まれそうになる。

いつもと同じような冗談なのに、いつもと違うと感じるのは、彼のその真剣な眼差しの所為。



「何、言ってんですか……惚れるわけ、ない…」

「佳奈」


柔らかく、優しく名前を呼ぶから、いつもみたいに強く言えない。


ここで、そんな名前で呼ぶなんてズルい。


< 76 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop