メロンパンにさようなら

「悪かった。度が過ぎた」


彼の胸の音と共に耳元で囁かれた言葉に、ポロリと涙が零れた。


謝らないで。

こうやって、優しさを見せないで。



最低で大嫌いだと思うのに、こんなふうにされたら嫌いになんてなれない。

あなたの優しさを、こうやって感じてしまうから。


だから惹かれていってしまう。



「ちょっ、離してください」


これ以上、抱き締められていたら“好き”って気持ちが動き出してしまいそうだから。



「もうちょっと、このままで居させてくれ」



ううん、もう遅いのかも。“好き”が動き出しているのかも。

今、この瞬間からじゃなく、もっと前から動き出していた。


気付かないふりをしていただけ。




あなたの腕の中は、温かくて心地よくて。このまま、ずっと時が止まってしまえばいいのに。


そう思ってしまうのです。
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