メロンパンにさようなら
夜10時、解散の時間が来た。
愛と一緒に、愛のお兄ちゃんの車で、家まで送ってもらうことになっている私は、愛の携帯に、
『校門前に着いた』
と、お兄ちゃんから連絡が入ると、愛と一緒に教室を出ることにした。
「お疲れさまでした」
と、部長に声をかけた時、高見翔の姿がないことに気付いた。
もう、帰ったのかな。
ふと気になって、
「あの……高見先輩は?」
と、部長に聞けば、教室をぐるりと見回した彼は、
「まだ、上かもな」
と言い、気を付けて帰れよ。と付け加えて手を振りながら、私たちを見送ってくれた。
“まだ、上かもな”
部長の言葉が、なぜかすごく気になった。
好きだから気になるの?
そうじゃない。
ううん、それも多少はあるんだと思うけれど、彼の、時折見せる寂しそうな顔を思い出すと、気になってしまって、一人、何か悩んでるんじゃないのかな。
いらぬお世話だと分かっているのに、会いに行きたくなった。