メロンパンにさようなら
「いいな〜、高見先輩と〜」

「憧れだもんね〜」

「ねぇ、ねぇ。やっぱ“翔”とかって呼んでるの?」

『キャー』


大きく響く甲高い叫び声に耳を塞ぎたくなる。

みんな、妄想しすぎだし。



終わりそうにない彼女たちの会話に、はぁっとため息をついた時、普段なら、朝『おはよ』ってやってくる愛の姿がないことに気が付いた。


あれ?
今日はまだ来てないのかな?

キョロキョロと教室を見回して見たけれど、愛の姿はなく、廊下の方まで視線を移すと、見知らぬ男子生徒と目が合った。


“こっちに来て”と言うように手招きをされ、周りをキョロキョロと見回した。


私じゃないと思ったから。初対面の人に、手招きなんてされるはずなんてない、と思っていたから。


周りを見回しても、彼の方へ行く様子のある人はいなくて、もしかして、“私ですか?”と、人差し指で自分を指差してジェスチャーすると、彼は、こくこく、と肯定を表すように首を縦に振った。

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