異世界転入生
「学長、失礼します」

母親は挨拶してから部屋に入る
ユウもそれに続き、母親のやや左後ろに立つ
ドアの向こうは、本棚に囲まれた広い空間
部屋の奥…唯一ある窓の前に大きな机…そして椅子に座っている老人がいた

「おぉ…久しぶりじゃのぅ…ルイ・フィーマよ」
「お久しぶりです、ハマンド学長」
「そちらの子が、娘かのぅ?」
「はい、娘のユウです」

いつもの雰囲気とは違う…真面目な母親に戸惑いながら、紹介されたためペコリと頭を下げた

「なるほどのぅ…ひとまず、その子にローブと杖をやらんとなぁ」

学長は立ち上がり、ゆっくりとした動作で2人のところまでやって来る
そして、何も無いところに手をかざすと、布と棒…ローブと杖が出てきた
それをユウに差し出す
ユウは戸惑いながら母親を見ると、母親はニコッと微笑む
その微笑を受け、ユウはローブと杖を受け取る

「?」

母親の微笑に安心し受け取ったが、何が何だか分からないユウ
布を広げてみる…形はポンチョに近いだろうか

「それを服の上から羽織っておきなさい。制服のようなものよ」

母親に言われるままに、ローブを羽織る
落ちないようにフードについているヒモをくくる
杖は、ローブの中にあるポケットに入れておく

(着てみると、ますますポンチョっぽいなぁ…フードまでついてる…)
「さて、準備は出来たようじゃのぉ
ユウは1年生じゃ…ルーフェル、おるのじゃろ?」

そう言うと、先ほどユウ達が入ってきた、この部屋唯一のドアが開き一人の青年が入ってくる。
濃い青色の髪…雰囲気は真面目そうな感じだった

「あら、ルー君久しぶりねぇ~」
「ルイか…久しぶりだな
なるほど…転入生は君の子どもか」

ルイに向けていた視線をユウに移す

(茶髪に短髪か…昔の彼女にソックリだな…)

ルーフェルは昔のルイを思い出しクスリと笑った
ユウは意味が分からず、ただ首を傾げた
そんなユウに気付き、ルーフェルはコホンと咳払いをしたのだった

「さて、ユウだったかな?
君の教室まで案内しよう」
「あ、はい」
「ルー君、よろしくねぇ~
ユウ、頑張ってねぇ~♪」

ルイはいつも通りの気楽な空気を纏い、ヒラヒラ手を振ってルーフェルとユウを見送った
ユウが一度振り返ったが、それはドアが閉まり強制的に視界に入ってこなくなった
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