異世界転入生
「それにしても、何故急に戻ってくる気になったんじゃ?」

学長の問いにルイはため息をついた
先ほどのようなお気楽な雰囲気は何処にも残っていなかった

「異世界も良いんだけどね~
ユウが退屈してるみたいだし…それに、ユウの成長の遅さが…そろそろ目に見えて現れるだろうから…」
「そうじゃの…お前さんらが行っておった世界は『標準』というのが重視される所じゃったのぉ…」

そう、魔法使いの自分たちは、向こうの世界の人間と歳のとり方が違う
今はまだ良いが、数年経つと際立ってくる
すると、色々な疑問が浮かび上がってくるだろう
向こうの世界では、自分たちと違う人を排除しようという風潮が少なからずある
全ての人がそうとは言わないが、そういう人と出会うと辛い思いをするのは、何も知らないユウ自身だ

「…それに、あの子魔力が強いのよ
そろそろコントロールを覚えさせないと暴走してしまうわ」
「…あの魔力…さすがお前さんとあ奴の子じゃな…」

コツコツ
トコトコ

「えっと…ルーフェル先生」
「ルー先生で良いよ、皆からそう呼ばれているしね」
「じゃぁ…ルー先生…僕は何処のクラスになるの?」
「君は1-Dだよ、そこしか無理だったから」
(…クラスの人数的な問題なんだろうなぁ…)

学長室から正面の大きな扉までの大きく広い廊下を、行きとは逆と方向に向かって歩いて行く2人

(…この廊下って、曲がり角とか何にも無かったよね…一度あのデッカイ扉から外出るのかな?メンドクサイなぁ…)

ユウは心の中で文句を言いながらも、ルーフェルについて行く
すると、ルーフェルは突然何もない壁の前で立ち止まった
薄暗い闇の向こうに大きな扉が見えているのに、ココで立ち止まる理由が分からずユウは首を傾げる

「ルー先生…ココに何処か違う場所に通じる道は無いですよ?」
「クスクス…君は本当に、何もない世界で育ったんだね
道ならあるさ、見ててごらん」

ルーフェルはスッと手を上げ、何の変哲もない壁に向き合う

「開け」

そう一言言うと、先ほどのルイのように手が光を放ち、壁に当たる
すると、壁がスッと消えて道が現れた
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