ブロってますか？

医師の話しは続く。

「恐らく強いストレス、ショックを受けた為、一時的に記憶障害を起こした物と思われます。」


「先生！一時的なら治る見込みはありますよね？」


「こればかりは、何時記憶が戻るか…断言は出来ませんが、とにかく御主人の助けが必要になります。焦らず気長に治療しましょう。あっ、月曜日には退院出来ますから、後は通院治療に入ります。では失礼。」


出て行く医者に、深々と頭を下げる健一。振り返ると美沙子が起きた所であった。困惑の表情を浮かべながら、美沙子が口を開く。


「あの…良くわからなくてすいません。確か私の旦那様の…健一さん？でしたかしら？」


明るく健一が言う。

「そうだよ。寝過ぎて忘れたのかな？ははっ。もう大丈夫らしいから、安心して良いってお医者さん言ってたから。もう直ぐ夢は覚めるよ。」


「そうですか…あなたが旦那様なのか、誰なのか、良くわからなくてごめんなさい。旦那様なら私を守ってくれますか？」


美沙子の思わぬ言葉に、一瞬理恵の顔が浮かぶ健一。


「も、勿論だよ。」

美沙子の普段見た事ない、怯えた表情に、思わず美沙子を抱きしめる健一。


『俺は…俺は何してるんだ…』