ブロってますか?
「宜しくお願いします。」


新人2人が頭を下げる。その時、机のパソコンに向かっていた田中が、僅かに顔を上げ、


「岡村さん、後時間とって下さい。」


と、声掛ける。
田中は本社から新人教育の為、1ヶ月間出向して来ている、総務部のベテラン女性社員である。まだ独身ゆえ、新規店舗が出来ると教育係として派遣される。


「あっ、田中さんお疲れ様。うん田中さん手空いたら声掛けてね。難しい話しかな?お手柔らかに。」


そう言うと、用意されていた自分用のデスクに座り、持参して来たノートパソコンを開ける健一。


「誰か、この2週間分の売上データ持って来てくれませんか?」

健一が呼び掛けると、すかさず反応する理恵。


「はい!今お持ちします。」


「すまない。西川さんだったよね?。お願いします。」


健一は、我ながら下手な演技だと思った。だが、今はあくまで会社の上司である。まだ自分の気持ちに迷いがあるのに、僕が健チャンであるとは言えない。しかし、後になって岡村と健チャンが同一人物と知ったら理恵チャンはなじるだろうか?それも怖い。
理恵が資料を持って健一のデスクに来る。


資料を差し出す理恵。
< 74 / 141 >

この作品をシェア

pagetop