菓恋(かれん) ~be+ひと目惚れing~
ひょっとしてコノ人イライラしてる…?
「甘さは濃厚でコクがあるのに、全然しつこくなくて後味がすごくいいし、あと、みるみるうちにトロけていく絶妙な口どけ感と滑らかな舌触りがまたサイコー♪」
「…!?」
「…みたいな表現とかできねぇかな」
「あたし、グルメレポーターじゃないし、そーいうのムリ」
「あ~ァ、せっかくパティシエが想いを込めて作った絶品チョコなのに、ソレをただ“美味しい”としか表現できねぇなんて、お前のあだ名“パティシエ殺し”に決定!」
「パティシエ殺しなんて、そんなあだ名ヤダ」
「いーや、お前はパティシエ殺しだ。お前のせいで前途ある若き天才パティシエの将来への夢と希望が絶たれたよ……」
「…って大袈裟だよ。…ってか、そもそも王子はなんでパティシエになろうと思ったワケ?」
「おやじがパティシエだったからさ。パティシエの息子に生まれてきた以上、俺が将来パティシエになるってことは、どうにも避けようのねぇ運命だったのかもしれねぇ」
「それって家業を継ぐってこと? 親の敷いたレールの上を走らされて楽しい?」
「それは違うな」