菓恋(かれん) ~be+ひと目惚れing~
「あたしのパパは、ケチで見栄っ張りで外面がよくて、いつも世間体ばかりを気にしてる人。そして、あたしのこともまるで自由に扱える“お人形”みたいに思って、いつも自分の思い通りにさせようとするんだ」

「“お人形みたいに”か……」

「社会的な地位もあるし、世間的には地元の有力者なのかもしれないけど、でもあたしにとっては尊敬の対象とはならない人間よ」

「………」

「自分の中にパパと同じ血が流れてるって考えるだけでも、全身体中を血が出るまで、かきむしりたいような、そんな衝動にかられることもあるよ」

「でもさ、“昨日は昨日。今日は今日。明日は明日の風が吹く”ってもんさ」

「え?」

「親は親、子どもは子ども。おやじさんはおやじさんだし、お前はお前。たとえ親がどんなだろうと子どもにはカンケーねぇ」

「子どもには…カンケーねぇ……」

「お前はお前らしく生きていけばいいんじゃねぇの?」


「あたしは…あたしらしく……」


王子みたいに言ってくれる人は、今まであたしのまわりには一人もいなかった。

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