菓恋(かれん) ~be+ひと目惚れing~
「今日は配達があるから、一緒に行って手伝ってくれねぇか?」
…って。
「うん、分かった。じゃあ、あたし着替えてくるね」
「あぁ、そのカッコのままでいいよ。…ってか、そのカッコのほうが喜ばれると思う」
「え!?」
ハナシを訊いてみると、今日はとなり町の地区の子ども会でちょっとした“お楽しみ会”みたいなのがあるらしくて、そこにおやつのカップケーキを納品するのが、毎年この時期のお約束だということだった。
そしてメイドのコスチュームで行くと、子どもたちが、まるでキャラクターショーの着ぐるみでも見るかのように、コーフンしてすごく喜ぶんだそうだ。
カップケーキの入った箱を全部、配達用のワゴン車に積み終えると、あたしと王子はそれぞれに車に乗り込んだ。
「カチリ」
運転席のシートベルトを締める王子。
「カチリ」
助手席のシートベルトを締めるあたし。