運命のヒト
prologue
あのラブレターをくれた貴方を
あたしはもう、思い出すことはない――…。
「熱、下がったか?」
ベッドでまどろんでいたあたしのオデコに、大きな手のひらが触れた。
「ん……。どうだろう、計ってないから」
「バカ。ちゃんと計れよ」
そう言って彼はチェストに手を伸ばし、引き出しの奥の体温計を探し始める。
そのとき。ゴトン、と何かが落ちる音が床に響いた。