運命のヒト
「美園! 待ってたよ」
広場の片隅に所在なさげにポツンと立っていた沢村さんが、あたしが来たのを見つけて駆け寄って来た。
「……家にいなくて大丈夫なの? 奥さんは?」
「しばらく実家に帰るって」
そう言って、沢村さんは深いため息。
それから、苛立ちをぶつけるようにあたしの両手をきつく握る。
「なぁ、家内、君に会って何を話した? どのくらい怒ってた? どこで俺たちのことバレたんだろう? どう思う?」
混乱してまくしたてる彼を見て、思った。
子どもだ、まるで。
ママの指示がなくては安心できない、ただの子ども。
実際、家での彼はいつもそうだったのかもしれないけれど。