運命のヒト
「あっ、あたしがやる――」
「いい。このくらい自分でやる」
手を伸ばしかけたあたしを制止して、大我は今度こそしっかりと段ボール箱を持ち上げる。
……大我の左手は、一般的な成人男性の半分以下の握力しかない。昔のケガの後遺症で。
仕事柄、重いフライパンをふる毎日は、きっと相当にキツいと思う。
本人はそれを一度も漏らしたことはないけれど。
そのとき、チャイムが鳴った。
誰だ?という顔で大我が玄関を開ける。