運命のヒト
「……さぁ。どこでバレたのかは、あたしもわからないけど。こうなった以上は今までみたいに続けられないよね」
そう言って、あたしは沢村さんに握られた手をそっと引っ込めた。
「待ってくれよ! 俺は妻に逃げられるかもしれないのに!」
それはそっちの問題でしょう。と言いかけたけど、口をつぐむ。
沢村さんの目が、暗がりでもわかるくらい血走っていたから。
おまけにここは、ひとけのない深夜の公園。変に刺激してキレられては危険だ。
どうやって切り上げようかと悩んでいると、沢村さんはすがりつくように眉を下げた。
「まさか君まで俺を捨てないよな? もとはと言えば、君の方からアピールしてきたんだぞ。俺には家庭があったのに、君が隙を見せてくるから……」
あまりに情けない言い分に、あたしは愕然としてしまう。
昨日まであんなにトキめいて、何度も抱かれたこの男の、本当の姿はこれだったのか。