運命のヒト

玄関を開けると、あたしはまず視線を下に落とした。

そこには、お行儀よく並んだシロの靴。

自分以外の靴が玄関にあることに、つい頬がゆるむ。


「ただいまーぁ」


習慣的に毎日言っている言葉。けど、聞かせる人がいる「ただいま」は、普段とはまるで響きが違う。


あたしは玄関に立ったまま、返ってくる声をいそいそと待った。

が、家の中は静まったままだった。


「……シロ?」

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