運命のヒト
「……アイツ」
エレベーターが止まり、ドアが開く。
「さっきケンカになりかけたとき、俺の左手を一瞬だけ掴んで、すぐ離しやがった」
え?
「まるで後遺症のこと、知ってるみてぇに」
あたしは言葉を失った。
また、だ。
シロが一方的にこちらのことを知っている状況。
あたしのことだけに留まらず、大我のことまで。
「……まぁ、気のせいだよな」
独り言のような声を残し、大我を乗せたエレベーターが下りていった。