運命のヒト


「あ、あと30分で終わりだから一緒に帰ろーぜ」


シロがそう言ったので、あたしはビールと軽い食べ物だけを注文した。

オーダーをカウンター奥の大我に伝え、シロは他のお客さんの接客に向かう。


……ふぅん、イキイキした表情しちゃって。心配する必要まったくなかったな。

ていうか、そんなに楽しいなら、ずっとここで働けばいいのに。

そんでもって、ずっとこの町で暮らせばいいのに。

あたしのそばにいればいいのに。

……なんてね。

出会ったばかりなのに、我ながら何を考えてるんだろ。


――『そう長くはいないと思う。俺、どうしても行かなきゃいけない所があるから』


ふと、こないだのシロの言葉が脳裏をよぎった。

胸の痛みから目をそらし、あたしは自嘲的に小さく笑う。

わかってる。重々承知してますとも。

シロは、いつまでもあたしのそばにいてくれる人じゃないんでしょ。
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