運命のヒト
つむぎかけた想いは、だけど途中で消えてしまった。
あたしの口に押し当てられた、手のひら。
最後まで言わせてもくれず、シロは顔をそむけて、力なく笑った。
「やめとけって、お前。雰囲気に流されてそんなこと言うなよ」
一番わかってもらいたい人に気持ちを否定され、胸をナイフでえぐられたような痛みが走る。
「っ……流されてなんかない。あたしはちゃんと自分の本心で――」
「だとしても」
あたしの訴えを遮るように、シロは語気を強めた。
「だとしても俺みたいなめんどくせぇの、お前は選ぶ必要ない」
……なぜ、届かないんだろう。
いつもそうだ。はぐらかされる。逃げられる。
どんなに近くにいても、シロに手は届かない。
「ズルいよ……そんなこと言うの、ズルい」
シロは、何かが欠けてる。
ひどくアンバランスで、つかめなくて。
だけどそんな部分もすべて含めて、あたしは彼に惹かれてしまうんだ。