運命のヒト

つむぎかけた想いは、だけど途中で消えてしまった。

あたしの口に押し当てられた、手のひら。

最後まで言わせてもくれず、シロは顔をそむけて、力なく笑った。


「やめとけって、お前。雰囲気に流されてそんなこと言うなよ」


一番わかってもらいたい人に気持ちを否定され、胸をナイフでえぐられたような痛みが走る。


「っ……流されてなんかない。あたしはちゃんと自分の本心で――」

「だとしても」

あたしの訴えを遮るように、シロは語気を強めた。


「だとしても俺みたいなめんどくせぇの、お前は選ぶ必要ない」


……なぜ、届かないんだろう。

いつもそうだ。はぐらかされる。逃げられる。

どんなに近くにいても、シロに手は届かない。


「ズルいよ……そんなこと言うの、ズルい」


シロは、何かが欠けてる。

ひどくアンバランスで、つかめなくて。

だけどそんな部分もすべて含めて、あたしは彼に惹かれてしまうんだ。

< 161 / 415 >

この作品をシェア

pagetop