運命のヒト
顔を上げ、公園の時計台に視線を走らせる。
針はやはり7時ちょうどを指している。
だけどその上部にある鐘は、まったく音を奏でていなかった。
……あの夜は、鳴ってたよね?
うん、たしかに鳴ってたはずだ。
今でも耳に残ってる。
真冬の夜空に響き渡る、神秘的な鐘の音――。
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
近くでゴミ拾いをしていたオバサンに、あたしは恐る恐るたずねた。
「時計台の鐘って、0時しか鳴らないんでしょうか……?」